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Close Up FULBRIGHT JAPAN 日米教育委員会フルブライト・ジャパン

2017-05-01

平和への想いが原点。世界のリーダーを輩出する日米両政府によるプログラム

「フルブライト」。この奨学金制度の名を耳にされたことがある方も多いだろう。
ノーベル賞受賞者の利根川進、小柴昌俊、根岸英一各博士、そして国連事務次長を務めた明石康氏などそうそうたるメンバーがこのプログラムを利用し米国で学んだ。学術的な分野などに限られているイメージがあるが、実は社会人の大学院留学にも門戸を開けている。

奨学金の支給のみならず、米国滞在中に安心して学べるサポートや、帰国後のネットワークの広がりなどフルブライト・プログラムならではの魅力は尽きない。あらためてこの素晴らしいプログラムを紹介していこう。

text_Eiko Ishii photo_Shinichiro Oroku(OWL Co.)

夢で終わらせない。留学を決意したら、ぜひ挑戦したい奨学金制度

フルブライト・プログラムは、日米両政府によるアメリカ留学のための給付型奨学金制度だ。第二次世界大戦終了直後に米国上院議員のウイリアム・フルブライトが「世界平和を達成するためには人と人との交流が最も有効である」との信念のもとに発案し発足した。日本においてはガリオア・プログラム(GARIOA/Government And Relief In Occupied Areas)が前身である。その後、半世紀以上にわたって、約160カ国37万人の人々が、フルブライト奨学生として米国と相手国間を渡航し、各自の研究活動を行うだけでなく、地域活動にも積極的に参加し、交流を深めてきた。帰国後は、さまざまな分野でリーダー的な役割を果たしている。

日本からは毎年40名前後がフルブライト奨学生として米国に旅立っている。渡航費、授業料、滞在費など、海外生活にかかるほぼすべての費用をカバーする手厚いこのプログラムに選ばれるのは、どのような人なのか。参加するメリットは何か。日本におけるフルブライト・プログラムの運営団体である日米教育委員会事務局長のマシュー・S・サスマン氏に聞いた。

「フルブライト・プログラムの最大の特徴は、国際的な評価の高さです。フルブライター(フルブライト同窓生)だと言えばそれだけで、優れた人物であることの証となる。もちろんキャリアにも大きなプラスとなるでしょう。それは、歴代のフルブライターたちが、帰国後もそれぞれの分野で活躍し実績を築いてくれたおかげにほかなりません。もう一つ、このプログラムの利点は、フルブライトコミュニティに参加することで得られる強力なネットワークです。フルブライターという共通項によって、国籍や年代を越えてわかり合える。グローバルなビジネスの舞台で出会ったビジネスパーソンが、同じフルブライターだったとわかり、急速に距離が縮まったといった話は非常によく聞く話です」

フルブライト・プログラムでは、自分の希望する分野の大学や研究機関に留学して学ぶことになるが、他のフルブライターたちと交流できるフルブライト独自のオリエンテーションやエンリッチメントプログラムと呼ばれるイベントが年に数回開催されている。エンリッチメントプログラムは、環境、人権、食糧問題や世界平和など、地球規模の課題について、泊りがけでディスカッションをする刺激的なイベントだ。バックグラウンドの異なる留学生たちとの率直な議論は、世界を知る貴重な機会であり、“同じ釜の飯”を共にした仲間たちとは強い絆が生まれる。これらの経験をきっかけに、「この経験を自国に還元したい」「世界平和に貢献したい」という強い意思を持って帰国するフルブライターたちは少なくない。このようなフルブライターたちの輪は、国境も世代も越えて受け継がれている。

ノーベル賞受賞者も、まだ名もなき若者だった

素晴らしいプログラムであることは理解できるが、奨学生に選ばれるにはかなりハードルは高そうだ。しかし、サスマン氏は言う。

「必要なのは、確かな実績と、実績に基づいた明確な目的、そして何より強いパッション(情熱)です。応募者は、最初から高い英語力や専門性のある人ばかりではありません。ノーベル賞受賞者たちも、フルブライト奨学生だった頃はまだ名もない若者だったのです。最初から自分には無理だとあきらめないでほしい」。所属も人種も信条も年齢も問わない。

社会人にもチャレンジしてほしいとサスマン氏。「これまで培ってきた実績をもとに、さらに学びを深め、視野を広げて、帰国後はその成果を社会に還元してほしい」

日本在住歴20年のサスマン氏は日本企業のグローバルな発展を心より願う一人でもある。世界の中で日本企業が存在感を示し、グローバルな競争に打ち勝っていくために、フルブライターたちへの期待は大きい。

日本におけるフルブライト・プログラムについて
フルブライト・プログラムは、今年65周年を迎える日米両国政府による留学制度。日米教育委員会(フルブライト・ジャパン)が運営しています。一般公募の奨学金制度として国際的な評価を得ており、国連事務次長を務めた明石康氏をはじめ、フルブライターと呼ばれる同窓生の多くが、教育、行政、法曹、ビジネス、マスコミ等さまざまな分野で活躍しています。デルタ航空も、日米の交流促進を目的とするフルブライト・プログラムの主旨に賛同し、4年前より奨学生の渡米・帰国用航空券の一部を提供しています。写真は日米教育委員会のマシュー・サスマン事務局長。

Voice of Students

優秀な研究者が集まるアメリカで最先端の金融を学ぶ / 原田 英さん

経済・政治的な影響力が強く、また質の高い研究者が集まる米国の大学で勉強したいと考えていました。フルブライト奨学生として、ニューヨーク大学で最先端の金融を学ぶ機会に恵まれ、大変貴重な経験をすることができました。学内の優秀な教授陣のみならず、現役の実務家の方々の話を聞くことも多く、ニューヨークで盛り上がりを見せるFintech企業の話は非常に興味深いものでした。

留学については全く知識がなく不安でしたが、社内の留学経験のある先輩が親身になって相談に乗ってくれたことが助けになりました。フルブライト奨学金の説明会でも卒業生の話を聞く機会があるので積極的に利用するといいと思います。

留学によって、日本国内だけではなく世界の情報に関心を持つようになり、足元の収益だけではなく長期的なマネージャーとしての目線を持てるようになりました。フルブライト・プログラム以上に世界を知る機会はほかないと思います。世界中の要職にフルブライターがいることはもちろん日本国内でも活躍している卒業生が多くいます。留学後もビジネスフルブライターの交流会が開催されており、情報収集の点でも活用しています。卒業した大学以外にも新たなコミュニティを持てる点は大きな魅力の一つです。

Profile
野村證券株式会社に4年在籍したのち2014年にフルブライト奨学生としてニューヨーク大学に留学。2016年にMBA取得後、野村證券に復帰。

  • 原田 英さん

ダイバーシティ国家ならではの法や契約の重要性を実感 / 塩川泰子さん

留学経験がないまま弁護士として働いていましたが、留学したいと思い、給付型の奨学金を探す中でフルブライト・プログラムを知りました。仕事をしながら留学準備や勉強をするのは難しかったです。応募するには、志望動機や研究計画を英文で書かなければなりませんが、自分の想いを言語化することが想像以上に大変でした。

海外での学びは大変有意義なものでした。私の専門分野である法は、歴史や文化、言語を背景に形作られます。歴史・文化・言語が異なる場所で法を学んだことで、これまで当たり前だと思っていたことが当たり前ではないという発見もありました。また、ダイバーシティ国家である米国だからこそ、言語化が大事であり、合意形成のために法や契約が発展したのだということがよく理解でき、非常に興味深かったです。

帰国後、学会や弁護士会でスピーカーとして話す機会をいただきました。また、英語案件も増え、依頼いただく案件の幅も広がりました。

フルブライト奨学金は、金額もサポートも手厚いだけでなく、フルブライトコミュニティーに参加できたことは最大のメリット。他の分野のフルブライターたちと出会え、たくさんの刺激をいただいたことは生涯の思い出になるでしょう。

Profile
弁護士。2015年にフルブライト奨学生として南カリフォルニア大学ロースクールへ留学。翌年NY州司法試験合格。帰国後、マーベリック法律事務所に参画。

  • 塩川泰子さん