プロゴルファー有村智恵プロスペシャルインタビュー

デルタ航空とオフィシャル・エアライン契約を結んでいる女子プロゴルファーの有村智恵プロが、トーナメントで優勝を飾ったという嬉しいニュースが届いた。
6年ぶりの優勝までの道のり、勝利へと導いた原動力とは何か?
休む間も無く次のステージに向け練習をこなす彼女のもとを訪ねた。

紆余曲折の中に優勝の光は見えていた

7月中旬、うだるような暑さの中、茨城県で行なわれた「2018 サマンサタバサ ガールズコレクション・レディーストーナメント」で名だたる強豪を押さえて見事に優勝を飾った有村プロ。18歳の若さでプロゴルファーとして華々しくデビューし、数々の勝利を飾り、快進撃を続けてきた彼女の優勝は実に6年ぶりとなる。優勝を勝ち取り、晴れ晴れとした表情を浮かべながらも次を見据えて前へと向かう凛とした表情が印象的だ。優勝までの長い道のりをどう乗り越えてきたのだろうか。

「結果的に優勝から遠ざかっていましたが、ここ数年調子が良くなってきているなという感覚はありました。優勝できるという手応えはあったんです。紆余曲折もあったけれど、日々の練習の中に光は見えていました」

落ち着きのある、しかし明るく語るその表情からは、この優勝が必然だったことがうかがえる。長い低迷期を乗り越えての勝利に酔しれる間もなく、次のステージへ向かってストイックにトレーニングをこなす。周囲の協力を噛み締めながら練習に打ち込むその姿からは、プロとしての威厳と芯の強さが感じられる。それにしても優勝をたぐり寄せた背景にはどんな変化があったのだろうか?

「優勝出来なかった期間をピンチとは思っていませんでした。長い人生、いいときもあれば悪いときもある、そんな感じでした。何かを大きく変えたいということもなかったんです。自分の感覚を信じて、練習に打ち込んだ結果が優勝に繋がったのだと思います」

冷静に自分の状況を見つめつつ、地道に毎日の練習でパフォーマンスが向上するように調整していく努力家、それが有村プロ。それでもやはり、発想の転換はあったようだ。

「20代前半のころは、カラダも元気だし、とにかく辛い練習をたくさんこなしてこそ、勝利があると信じていました。結果を出すには自分をとことん追い込んで、楽しくゴルフをやって結果を求めている人たちのことを認めることはできなかった」

そんなストイックな彼女も、2013年に主戦場をアメリカに移し、海外選手と同じ舞台に立つことで心境に大きな変化があったという。

「アメリカの選手とどうやって対等に戦おうか考えたとき、自分を追い込みすぎて、これ以上追い込めないというところまで練習をしたときに、心が折れたんです。若い頃は馬力で乗り切れたけど、同じ練習量でカラダを壊した時、今まで、私の中にはストイックな有村智恵しかいなかったなって」

 

発想の転換によって見えて来た新たな自分と可能性

「追い込みすぎたとき、発想を変えてみたんです。ナーバスな時の自分は、緊張する時もあるよね、とありのままの自分を受け入れました。練習が上手く行かない日は、昨日よりはここが良くなった、というポジティブな見方で捉えるようになりました」

そうした発想の転換によって、自分の弱さも受け入れながら前に進む。ものごとのプラスの面に目を向けることで、自分自身がラクになったという。発想を変えることで現状を打破し、より良い方向へと舵を切るということは、ビジネスにも通じるものがある。

「自分でコントロールできないこともあるし、自分ですべてを背負うことは難しい。いいときと悪いとき、ありのままを受け入れ、今、何をすべきかを冷静に判断することが鍵になる、と思えるようになりました」

 

環境を変えることはパフォーマンスの向上にも繋がる

2017年からヤマハと契約を結び、クラブを変えてから初の優勝でもある。年々ゴルフクラブのスペックが高くなるなか、選手とクラブとの相性も勝利を左右する大きな鍵を握る。

「クラブに対する考え方も昔に比べて変わりました。20代前半は勢いで突き進んできた部分もありましたが、今は使用するクラブとのマッチングを見極めるのも大事だな、と。自分の力を遺憾なく発揮できる環境を整えようと考えるようになりました」

クラブを変えるということはプロゴルファーにとって大きな決断というが、そうした変化を起こすことが新たなパフォーマンスを引き出すチャンスにもなり得る。トーナメントを戦う者として、常に上を目指して冷静に判断するスタイルも有村プロらしい。

「今回の優勝が新たな始まりだと思っています。今までずっと支えてくれた方たちに早く次の優勝を見せたい気持ちでいっぱいです」

競技での頂点を目指す彼女だが、女性としての今後についても聞いてみた。

「今後もありのままの自分でいたいですね。競技は続けたいですし、女性として次のステージにも進んでみたい。女性アスリートの先輩たちも同じような話をしていますが、ずっと両立できたらいいですね」

満面の笑みでそう語る等身大の飾らない姿も彼女の大きな魅力だ。そんなありのままの人間性とゴルフに対する真摯な姿勢が彼女の邁進を支える最大の武器。次の優勝も射程圏内と確信できるパワーに満ちていた。


Profile
有村智恵
1987年11月22日熊本県熊本市東区出身。
宮里藍に憧れ10歳よりゴルフを始める。
すぐに頭角をあらわし、九州学院中学2年時には日本ジュニアゴルフ選手権女子12~14歳の部で優勝。翌年には全国中学校ゴルフ選手権でも優勝を飾っている。
東北高等学校に進学し、卒業後の2006年にプロゴルファーとなる。
2008年20歳の若さでプロミスレディスゴルフトーナメントに出場し、初優勝を飾る。
2009年にはエビアン・マスターズで米国ツアー初参戦を果たし30位。
2012年日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯で優勝。
2018年サマンサタバサ ガールズコレクション・レデーストーナメントで優勝。
トーナメント中、勝負の日に着るウエアの色はもっぱら赤。

有村智恵公式ページ
http://chie-arimura.net/