【搭乗体験記】デルタ・ワン スイート:トラベルライター 長谷川あや

デルタ航空は、2017年10月に、個室タイプのビジネスクラス「デルタ・ワン スイート」を導入。
2018年9月現在、日本発着便では、成田―デトロイト線で、「デルタ・ワン スイート」とプレミアムエコノミー「デルタ・プレミアムセレクト」を搭載したA350-900 型機を運航している。

まだまだ貴重な存在ということもあり、「デルタ・ワン スイート」に搭乗したと伝えると、飛行機好きやトラベルライターの友人たちは、「マジで?」「うらやましい」と色めきたつ。悪い気はしない、むしろもっと自慢したいが、実は私が「デルタ・ワン スイート」を体験できたのは幸運な偶然だった。

7月、私が搭乗したのはセントポール(ミネアポリス)―羽田便だったが、この日はたまたま「デルタ・ワン スイート」を搭載した機材に変更になっていた。(注:2018年11月より、羽田‐ミネアポリス線にデルタ・ワン スイートが搭載されています。)

その日はもともと「デルタ・ワン」に搭乗予定だった。それだけでもテンションが上がるのだが、機内に入り、スライド式ドアを目にした瞬間、小躍りしたい気分になった。これって……。初めまして、「デルタ・ワン スイート」さん、お目にかかれて光栄ですと、心で快哉を叫んでいるのは私だけではなかったようだ。すぐ後ろの席では、この路線の常連らしきビジネスマンが、「いつもはこの機材じゃないよね。どうしたの?」と、キャビンアテンダントに尋ねていた。
「普段はデトロイト―成田線に導入されている機材なのですが、機材のやりくりの関係で今日初めてこの路線を飛ぶことになったんです」
ラッキーの一言である。フライトアテンダントは、乗客ひとりひとりにスライド式ドアの使い方を説明してくれた。いや、ドアくらい教えてもらわなくても開閉できるでしょ、とも思ったが、これがちょっとしたコツが必要だった(慣れれば簡単です)。

スライドの高さは座席のヘッドレストと同程度。外から立って覗き込めば中は見えるが、中に入って座り、スライドを締めると「個室」が完成する。
上部は空いているわけだが、気にならない、むしろプライベート空間と開放感の、両方のいいところ取りをしている印象だ。座席の配列は「デルタ・ワン」と同じく1−2−1。中央列の座席の頭上には荷物棚がなく広々としている。
そして、ホテルの客室のように、自分だけの時間を過ごしたいときには、「Don’t Disturb」サインを掲げることができる。本当にホテルみたいだ。

まずはこれから約12時間を過ごす「自室」の探検だ。そして、「自室」を自分仕様に整えなければならない。

早速、靴を脱いでスリッパに履き替える。完全に個人的な話で恐縮だが、脱いだ靴の置き場所にはいつも悩まされている。適当に置いておいて、着陸前に見当たらずに慌てた経験は一度や二度ではない。しかし、「デルタ・ワン スイート」では、そんな心配はご無用。ちゃんと専用の靴の収納スペースが用意されていた。
そして、ヘッドフォンの収納スペースがあるのも気が利いている。デザイン性の高い「LSTN」のヘッドフォンはそこにかけておくだけで、「自室」のおしゃれ度がアップする。

「自室」の探検や写真撮影をし、ウェルカムドリンクのシャンパーニュ(私の搭乗時は「ランソン」だった)で喉を潤したらあっという間に離陸の時間になった。早速映画でもみることにしよう。

ビジネスクラスに限ったことではないが、デルタ航空の機内エンタテインメントシステムの実力はなかなかのものだ。選択肢が多すぎて、観る映画を選ぶのには骨が折れる。うれしい悲鳴だ。
さらに、「デルタ・ワン スイート」には、米国航空会社最大の18インチ(約45.7cm)高解像度個人用モニターがついているのだが、これが想像以上の迫力だった。

また、前述の「LSTN」のノイズキャンセリング機能付きヘッドフォンはぜひ使ってみてほしい。おしゃれなだけでなく、機能も優秀なのだ。最近は自前のヘッドフォンを使う人が増えている。また、「オーディオ系は弱いのよね」「ヘッドフォン? なんでもいいわ」という人も多いと思うが(私もそのクチである)、機会があれば、ぜひ試してみてほしい。こと細かなスペックの蘊蓄には興味がなくても、使えばその実力がわかるはずだ。なんだかスペクタクルな映画が見たくなった。

搭乗後の機内サービス(昼食)は和食を選択した。洋食の選択肢も気になるものばかりだったが、ミネアポリスのレストラン「マススシ&ロバタ」が手がける料理に魅かれたのだ。メインの「照り焼きチキンのフライパン焼き」はもちろん美味だったが、うなぎ、ワカメ、きゅうりの和え物に、マスターソムリエ、アンドレア・ロビンソン氏セレクトのシャルドネがとてもよく合った。

デザートワインまで満喫したら、さ、ひと眠りしますか!
ウェスティンホテル開発の機内用ヘブンリーのベッド寝具はやっぱり気持ちがいいなあと思ったか思わないかのうちに、私は眠りについた。

目覚めたとき、かなりすっきりとしていた。これは相当な時間、眠ってしまったはずだ。おそるおそるモニターの残りのフライト時間を確認したところ、2時間半を切っていた。
最後に目にしたときは、たしか9時間台だったと思う。仕事柄、飛行機に乗ることは多いが、そこまで爆睡することはなかなかない。
搭乗レポートを書くにあたっては、もっとじっくり機内サービスを利用するべきだったと反省しているが(フライト中の軽食もいただきたかった)、仕方ない。それだけ快適だったのだ。ある意味、寛ぎのプライベート空間を提供する「デルタ・ワン スイート」の醍醐味を味わいつくしたともいえなくもないのでは、と自らを正当化してみる。

「デルタ・ワン スイート」では、「デルタ・ワン」同様、フルフラットベッドシートを採用したうえで、さらなるゆとりを設けている。ベッドの全長は最大2メートル5センチ、幅は最大60センチと、一般的な日本人の体型なら、体を伸ばしてくつろぐことができる。もはやこれはシートというより、ベッドといっていいのではないだろうか。体を横たえながらも快適に本が読める、スライド式の読書灯も便利だった。

そして私自身はパソコンを開くこともしなかった(できなかった)が、個室仕様の空間には大きなテーブルとパソコンなどをおけるトレイがあり、ユニバーサル電源と高性能USBポートも利用できる。あとで調べたところ、照明も個別に調整可能だ(私はここにたどり着く前に深い眠りについてしまったのだが。せっかくの機能、利用せずにすみません……)。仕事をするにももってこいの環境だ。約12時間のフライトを終え、羽田についたとき、まず思ったのは、「いますぐミネアポリスに戻ると言われてもやぶさかではない、というかこのまま乗っていたい」ということだった。


搭乗日:2018年7月
トラベルライター 長谷川 あや