歴史ある劇場で極上のミュージカルを楽しむ、トロント

演劇の本場というと、どの都市を思い浮かべるでしょうか。

ニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドと答えるひとが多いと思います。実際、そのとおりなのですが。
実はカナダ最大の都市・トロントは、ニューヨーク、ロンドンに次いで劇場の多い街。市内には大小40以上の劇場があり、連日、さまざまなパフォーミングアートが上演されています。観劇しなくても、煌びやかなネオンのなかを歩いているだけでも心が浮き立ちます。

もともとトロントは、「トロント映画祭」が行われるなど、文化&芸術活動が盛ん。バレエ団やダンスカンパニー、オペラ団体、交響楽団なども複数あり、積極的に活動を行っています。

ミュージカルもしかりで、ブロードウェイ進出を目指す新作ミュージカルが、トロントでトライアウト公演(試演公演。地方公演で観客の反応を見ながら作品の最終仕上げをする)を行うことも多々。また、トロントとニューヨークが近いこともあり、日常的に劇場へ通う“シアターゴアー(Theatre Goer)”は、ブロードウェイ遠征時に、トロントに立ち寄ることも多いんです。

Royal Alexandra Theatre Courtesy of Mirvish Productions

トロントは歴史のある劇場が多いことでも知られています。
たとえば、「エルジン・アンド・ウィンター・ガーデン劇場(The Elgin and Winter Garden Theatre Centre)」は、「エルジン」と「ウィンター・ガーデン」のふたつの劇場の総称で、1913年12月に「エルジン」、1914年2月に「ウィンター・ガーデン」がオープン。
劇場と劇場が二層構造になった世界で唯一の複合スタイルの劇場は、カナダの歴史遺産に指定されています。毎週2回、月曜17時と土曜10時にガイド付きのバックステージツアー(https://www.heritagetrust.on.ca/en/index.php/ewg/ewg-home/tours)が実施されているのでタイミングがあえば参加してみては?

1907年オープンの「ロイヤル・アレキサンドラ劇場(Royal Alexandra Theatre)」は、現在上演が行われている劇場では北米最古。19世紀の重厚なボザール様式で作られていて、こちらも国の歴史的建造物に指定されています。

Royal Alexandra Theatre

さまざまな劇場でさまざまなパフォーマンスが繰り広げられていますが、トロントの劇場街でぜひチェックしたいのが、カナダ人クリエイターが製作した、カナダ発のミュージカル「カム・フロム・アウェイ(COME FROM AWAY)」です。
2013年にトロント大都市圏の「シェリダン・カレッジ(Sheridan College)」で初パフォーマンス。サンディエゴ、シアトル、ワシントンD.C.、トロントでの公演を経て、2017年3月にブロードウェイで初演され、現在も上演中です。また、2019年1月末からはロンドン・ウェストエンドでの初演が決まっています。

The Elgin Theatre Photo Credit: Peter Lusztyk

ストーリーは実話が元になっています。
ある事件がきっかけで、さまざまな国籍の約7,000人が、人口わずか1万人のカナダの小さな漁村・ガンダーに足止めされることに。そんな“カム・フロム・アウェイ(遠くから来た人)”と、地元の人々との交流を、ハートウォーミングに描いています。決して派手な作品ではありませんが、12人の役者が1人何役もをテンポよく演じ分ける演出は斬新で、エキサイティング。2017年のトニー賞ではミュージカル演出賞を受賞しました。

筆者はブロードウェイの公演も見ていますが、物語の舞台となったカナダで見るとまた違った感慨も。カナダの国民的ドーナツチェーン「ティムホートンズ(Tim Hortons)」もちゃんと舞台上に登場していて、思わずにんまりしてしまいます(ブロードウェイ公演では気づきませんでした)。
なお、トロントでは、2019年1月20日までは「ロイヤル・アレキサンドラ劇場」で上演中、2月5日から、「エルジン劇場」に劇場を移して公演が行われます。

公演の情報を得るには、トロントの演劇関連を情報がまとまっているこちらのサイト(https://www.toronto-theatre.com/)、もしくは各劇場や公演の公式ホームページからアクセスするのが便利です。チケットもネット上で購入できます(観劇の当日劇場の窓口で、実際のチケットと引き換えます。その際、写真付きのIDが必要となります)。

ちなみにチケット代はブロードウェイやウエストエンドよりも少しお得(為替レートにもよりますが……)。
また、公演によっては公演当日に格安チケット(ラッシュチケット)や立ち見席(SRO)、またはロッタリー(宝くじ)チケットが販売されるケースも。ラッシュチケットは基本的には早いもの勝ちですが、ロッタリーチケットはその名のとおり抽選販売。販売方法はやはり公演によって異なり、筆者がゲットした『ウィキッド』の場合は、上演2時間半前から2時間前に劇場で名前と希望の枚数(1人1枚もしくは2枚)を書いた紙を抽選箱に入れ、2時間前に抽選。当選者が格安でチケットを購入できます。
抽選もエンターテイメント性たっぷりでかなり盛り上がります! 運だめしで、挑戦してみるのも楽しいですよ。

日本ともブロードウェイともウエストエンドとも異なる、トロントの「劇場」体験。ぜひ一度、体感してみてください。


取材日:2018年7月
トラベルライター 長谷川 あや