もっとフレキシブルになって、様々なやりたいことを実現したい

芸歴20年となる節目の年だ。俳優としてテレビドラマや映画で活躍するのはもちろん、数々の演劇やミュージカルでも存在感を発揮している。今、全力で挑んでいるのは、ブロードウェイミュージカルの名作『ピピン』。本場で観劇したこともある、思い入れの深い作品だ。主人公である「ピピン」を演じる意気込みやミュージカルへの想いを綴ってもらった。

Profile

1985年12月26日生まれ、東京都出身の俳優・歌手。ドラマ、映画、舞台など幅広い分野で活躍。舞台では2010年にミュージカル『エリザベート』で第65回文化庁 芸術祭「演劇部門」新人賞を受賞。2015 年には第6回岩谷時子賞 奨励賞、2016年には第23回読売演劇大賞 優秀男優賞を受賞、 2018年にはミュージカル『ブロードウェイと銃弾』で第43回菊田一夫演劇賞など数多くの賞を受賞している。


ブロードウェイでダイアン・パウルス演出の『ピピン』を観た時、めくるめく世界観に圧倒され、まるで子供みたいにわぁ!っと心を掴まれました。スティーヴン・シュワルツの音楽も素晴らしく、耳にも目にも新しい。まさか50年以上前の作品だとは思いもしませんでした。視覚的にはアクロバットがたくさん織り込まれていて、まるでシルク・ド・ソレイユのショーみたいで。一般的なミュージカルとは異なり、ひたすら、おーっ!すごーい!と声をあげて、まさに驚きの連続でした。同時に主人公ピピンの内なる葛藤、人生での迷いや岐路、居場所探しなど、誰もが思い当たるテーマをはらみ、私たちの心に刺さります。当時は自分がピピンを演じるなんて思ってもみませんでしたが、今回、あのブロードウェイと同じ演出版に出演できて、本当に幸せです。まして親友であり、ポテンシャルの高いクリスタル・ケイと一緒ですから、とても心強いです。

会見では「本場を超える」と申し上げましたが、口にすることもおこがましいくらい難しいことだと重々承知です。やはりオリジナル版として、初めて創る人たちのエネルギーやパッションは並大抵ではありません。もちろん、言語の違いがあり、翻訳の壁もあります。それでも、向こうに劣ることなく、作品の魅力をしっかり届けられるように努めたいです。今回はブロードウェイのスタッフが来日し、日本で僕たちに稽古をつけてくれます。美術や衣裳も向こうと同じで、キャストだけが日本キャストに変わる。いわば材料を渡されて、より美味しいご飯を作るのが僕らの使命かと。

日本のミュージカルは、ブロードウェイに比べたらまだ成長過程にありますが、コーラスを揃えるなどの協調性は日本の方が優ってる気がしますね。外国人演出家がおーっ!となるプリンシパルは日本のミュージカル界にはまだ稀じゃないかな?ここは頑張りどころですね。

僕も芸歴20年を迎えて、ピピン同様に自分の居場所や存在理由を模索中です。これはきっと僕だけでなく、誰もが考えている、もしくは考えたことのあるテーマでしょう。代表曲「Corner of the Sky」の”僕の居場所はどこなんだろう?探そう My Corner of the Sky” という歌詞のごとく。昔の僕は、俳優として、アーティストとして一生やっていく!と思っていました。でも人生経験を重ねて時間の大切さや短さ、儚さ、尊さを感じている今、もっとフレキシブルになって、限られた時間で様々なやりたいことを実現したいと思うようになりました。自分は何をしたいか、この先どうなりたいのか、ここ20年で一番考えているところです。

ニューヨークは数回訪れた経験があります。個性的なエリアが多く、最先端でおしゃれな街。なかでもブロードウェイはミュージカルの聖地で、オフブロードウェイまで含めると数え切れないほどの新しいアイディアと作品が日々生まれています。特に日本と大きく違うのは公演のシステム。作品が面白くて成功すれば何年も公演が続き、つまらなかったらどんな大作や話題作でもすぐにクローズしてしまう。シビアな世界ですが、まさに頂点にいる才能たちが切磋琢磨するエンターテイナーの街と言えるでしょう。

僕が現地で観劇したのは2、30作品ほど。ブロードウェイでミュージカル鑑賞を楽しむには、まず日本人であることを忘れた方がいいです。現地では、面白ければ声を出して笑ったり、良い演技には拍手やヒュー!と口笛を鳴らしたりするのが当たり前。観客の反応が明快で、客席の盛り上がりも含めて作品が完成します。俳優が舞台上で何か面白いこと、良い芝居をすると、客席がワーッと湧き、そのエネルギーを俳優が受け取ってまた投げ返す・・・そんなキャッチボールが最高です。ですからブロードウェイで俳優が観客に向かってバシバシエネルギーを飛ばしてきたら、現地のノリに便乗して、どんどん声や拍手などの態度で返してみては?きっと忘れがたい観劇体験になるでしょう。

ニューヨークは良い意味で刺激に溢れています。街にいる人たちも肌の色や国籍は実に様々。塗り絵に喩えると、色を何色も混ぜて日々新しい色が生まれるイメージ。尖っている部分もあり、個性と個性がぶつかり合う様はいつも刺激になります。特に劇場の舞台の上に立つ人たちは、表現力、歌唱力、存在感が圧倒的。ニューヨークで僕は必ず膨大なエネルギーをインプットして持ち帰ってきます。


トニー賞に輝いた名作の日本語版を本場のスタッフがプロデュース

『ピピン』は、人生の大いなる目的を模索する若き王子「ピピン」の物語だ。<特別な何か>を求める旅を続け、さまざまな出会いと体験から人生の意味を見出そうとする。その旅を終えたとき、ピピンが見つけた本当の幸せとは……。ブロードウェイでの初上演は1972年で、トニー賞5冠に輝いた名作中の名作である。2013年にはダイアン・パウルス演出でリバイバル版を上演。刺激的なダンスとスリリングなサーカスアクロバットが話題となり、トニー賞最優秀演出賞を受賞している。今回の日本語版演出では、リバイバル版を手掛けたクリエイティブチームが再集結。ブロードウェイの演出に基づき、更なるレベルのエンターテインメント作品を目指す。キャストは、主人公の「ピピン」に城田優。物語を観客に披露する狂言回し「リーディングプレイヤー」にCrystal Kay。そのほか、今井清隆、霧矢大夢、宮澤エマ、岡田亮輔、中尾ミエ、前田美波里など実力者が脇を固める。彼らが劇中で歌い上げる「Magic To Do」、「No Time At All」といった名曲も大きな見所だ。上演は全国4会場。2019年6月10日~6月30日の東京、東急シアターオーブでの公演を皮切りに、名古屋、大阪、静岡で予定されている。

ブロ―ドウェイミュージカル「ピピン」公式ホームページ
www.pippin2019.jp