世界には、クルーズの聖地と呼ばれる場所が3つある。地中海とカリブ海、そして、アラスカだ。特に、夏のアラスカクルーズは、巨大な氷河、雄大なフィヨルド、遠望に連なる山脈、緑豊かな島々といった絶景を満喫しつつ、さまざまな野生動物と出会える。大自然を愛する人々が一度は参加したいと願う憧れの旅である。
その憧れの旅の最高峰が、ラグジュアリーシップへの乗船だ。今回は、世界で最もラグジュアリーなクルーズラインを展開するリージェント・セブン・シーズ・クルーズの船、セブンシーズマリナーで、アラスカの大自然と歴史ある街を巡った。

text_Maiko Asami,Yuki Morimoto photo_Tomohito Ishimaru Coodinator_MOMOMATSU


アメリカ合衆国で最大の面積を誇る州、アラスカ。日本の約4倍の広さで、その自然豊かな環境から「アメリカ最後の辺境」とも呼ばれている。気温と湿度が低く過ごしやすい夏から紅葉が美しい秋にかけては、日本人からも人気が高い観光地。成田空港からシアトル、タコマ空港を経由しアンカレッジと赴くのが一般的だ。

広大な大地は「北極圏」「中央アラスカ」「西南アラスカ」「中南アラスカ」、そして、夏のアラスカ旅の主役「インサイドパッセージ」に分けられる。インサイドパッセージを直訳すると「内海水路」。東南アラスカに位置し、アラスカのスキャグウェイからカナダのバンクーバーをつなぐ海上の回廊だ。1600㎞に及ぶこの航路は、大小1000を超える緑豊かな島々、悠久の時をかけて創り出されたフィヨルド、トドやイルカ、クジラと出会える豊潤な海、そして、眼前に迫る雄大な氷河などを堪能でき、クルーズの聖地とされている。

そのクルーズのなかでも別格なのが、リージェント セブンシーズ クルーズのアラスカクルーズだ。クルーズシップは、カジュアル、プレミアム、ラグジュアリーの3タイプに大別される。RSSCは、最上級であるラグジュアリーシップを世界中で展開するアメリカのクルーズ会社だ。

ラグジュアリーシップといえば巨大客船を想像するかもしれないが、それは正しくない。分かりやすい目安でいえば、乗客に対する乗組員比率が高いほど、ラグジュアリーと考えてよいだろう。そういったラグジュアリーシップは、当然、船内も贅を尽くした造りとなっている。今回、乗船したセブンシーズマリナーも、そのなかのひとつだ。例えるなら、洋上の五つ星ホテルといったところだろう。

クルーズシップの魅力は、まるでホテルがそのまま移動するようなところにある。荷物をキャビンに運び込んだら、そこはもう自分の部屋。下船までは荷造りや荷解きは必要ない。寄港地に着けば、パスポートと財布、カメラといった最低限の荷物だけで観光。船に戻り、船内で食事やアクティビティを堪能し、心地よい眠りにつけば、翌朝には次の観光地に到着している。広大な面積を誇るアラスカ旅行には、まさにうってつけの旅の手段だ。

セブンシーズマリナーで行くアラスカ、インサイドパッセンジャーの旅は、アンカレッジから車で2時間ほどの港町、スキャグウェイから始まる。乗船手続きを終えてタラップを登れば、そこからは別世界。出迎えのクルーからウェルカムションパンを受け取り、一口で飲み干せば、世界最高の夏のバカンスの始まりだ。

Access

アラスカクルーズの起点・終点となるのが、ゴールドラッシュで栄えた町、
スキャグウェイだ。日本からシアトル経由アンカレッジまでの飛行時間は約15時間。
そこから車で走ること2時間程ほどで到着する。
このクルーズ最大の見所のひとつが、写真のハバード氷河。全長122Km、幅9km以上、
高さ約120mの雄大さを誇る。船は1kmの距離まで近づくので、運がよければ氷河の崩落を目の前で見ることもできる。氷河は気泡が少なく透明度が高い。
その透明度が生み出す神秘的な青は、まさに死ぬまでに目にしたい絶景のひとつだ。


01 SHIP

本物だけが醸し出す格調の高さ
アラスカの大自然との対比が船内の絢爛さを引き立てる

アラスカの大自然を巡るクルーズに誘う船はセブンシーズマリナー。
アメリカが誇る世界有数のラグジュアリークルーズカンパニー、リージェント セブンシーズ クルーズが有するラグジュアリーシップだ。本物だけがもつ格調を漂わせるオーセンティックな船内、自然と笑顔にさせてくれる心地よい一流のサービス。大自然が持つ荒々しさとは対局の優雅な船旅が始まる。


1. 船内にはライブラリーもあるので、ゆっくりと読書に耽ることができる。ライブラリーを出た場所には、
カード&カンファレンスルームがあり、家族でチェスやカードゲームを楽しむ姿が見られた。
豪華客船といえばリタイア世代が多いイメージだが、夏のアラスカクルーズは、親子連れや祖父母・親子の3世代でバカンスを楽しむ姿も目立つ。
2. DECK11には、ラグジュアリーシップの定番である温水プールとジャグジー。
フローリングにはチーク材が使われ、細部にもこだわりが感じられる。ジャグジーは3つあり、
プールバーで注文したドリンク片手にゆっくりとできる。夏とはいえ、氷河近くまでいくとダウンジャケットが欲しくなるほど寒くなるアラスカ。キンと冷えた空気のなかのジャグジーは、また一興だ。
3. フロントをはじめとして、レストランやラウンジ、カジノ、シアター、スパ、フィットネスなどのパブリックスペースが集まるのがDECK5~7。エントランス部は吹き抜けとなっており、らせん階段がゴージャスさを引き立てる。


今回のアラスカクルーズを演出するのは、フロリダ州マイアミに本拠を構えるリージェント セブンシーズ クルーズ。保有するラグジュアリーシップ4隻が各地でクルーズを展開しており、世界最高峰のクルーズ会社のひとつだ。その最大の特徴は、“究極のオールインクルーシブ”。寄港地で体験できる多彩なディスティネーション、無制限のインターネット接続、個人対応に徹したサービス、洗練された一流の料理、選び抜かれたワインやスピリッツ、そしてチップまで、すべてがクルーズ料金に含まれている。

乗船したのは、2018年4月にフルリニューアルを終えたばかりのセブンシーズマリナーだ。世界で初めて全室スイートルームと海に面したバルコニーを実現した船のひとつである。ゲスト700人に対して、スタッフは445人。比率は1 :1・6でハイレベルな個人対応サービスを実現している。この船で、7泊8日のアラスカクルーズに赴く。

船内に一歩足を踏み入れれば、その豪華なしつらえに目を奪われる。といっても、決して外連味あふれる派手な豪華さではない。大理石の床、タイルや木目といったネイチャーマテリアルを活かした壁、品の良いファニチャー、そして本物の絵画・彫刻の数々。オーセンティックで荘厳な佇まいは、さながら歴史ある五つ星ホテルといったところだ。キャプテンに話を聞いたところ、「アメリカの船会社がヨーロッパで建造した船。両方のよいテイストが入り交じった品のある内装になっている」と胸を張った。その言葉通り、ヨーロッパ的な堅苦しさとは無縁だ。品格がありながら、その雰囲気はカジュアルさも併せもつ。
アラスカ旅行はアメリカ国民にとって、定番のサマーバカンス。そういったことも関係しているのだろう。服装はフォーマルではなく、日中はTシャツやジーンズといったカジュアルでもOK。夜は、シャツとジャケットというエレガントカジュアルだ。もちろん、夜はドレスアップしているゲストも多いので、日本ではなかなか機会がないフォーマルな装いに挑戦するのも楽しみのひとつだ。

リラックスな雰囲気を引き立てるのが、スタッフの対応だ。一言で言えば、フレンドリー。一度でも挨拶をしたりサーブをしてもらったりしたら、五つ星ホテルと同様に顔と名前を覚えてもらえる。そして、次からは顔を合わせるたびにファーストネームで声を掛けてくれ、「日本の友人」と称し気遣ってくれた。実は、セブンシーズマリナーは日本にも寄港している。その関係もあって親日のスタッフも多く、楽しいコミュニケーションを取ることができた。もちろん、それは馴れ馴れしいといったわけではない。細やかな気遣いがあってこそ、フレンドリーでも心地よい空間を生み出しているのだ。セブンシーズマリナーを擬人化するなら、容姿端麗で第一印象は緊張を強いるが、実は人懐っこく、しかも気遣いができる人物といったところ。そんな人物に傾倒しないわけがないだろう。これこそ、この船が持つ最大の魅力かもしれない。

◀朝、客室に配られる船内新聞。寄港地の情報や船内で開催されるアクティビ
ティ情報、1日のスケジュールなどが載っている。

また、船内新聞と共に、ゲストの出身国にあわせたニューズペーパーも配布さ
れる。


Interview

全ての乗船者は家族であり大事な友人です
「アラスカクルーズの最大の魅力は、大自然を堪能できることです」と語るのは、この船の船長である、Captain.AIVOPALMだ。最大の見所だというハバード氷河には、流氷の状況を確認しながら1km以内まで近づくという。もうひとつの見所は、クジラだ。「運がよければジャンプも見られます。ただし、写真に撮るのは簡単じゃない。心のシャッターを切って下さい」とキャプテンは語る。
船内でのオススメを尋ねたところ、枚挙に暇がなかった。素晴らしい食事、 燦爛たる内装、数々のアクティビティ。しかし、もっとも重要なのは、スタッフのホスピタリティだという。
「私たちは、全てのスタッフを家族として大事にしています。だからこそ、スタッフはゲストを家族や大事な友人のよう迎えることができるのです。この船に乗っている人は、スタッフもゲストも、みな家族であり大事な友人です」